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2020年11月03日の記事は以下のとおりです。

日本学術会議の会員選任について

 

1、天皇による国事行為(憲法第3、4、6、7条)との対比 

 (1) 内閣総理大臣、国務大臣、法律の定めるその他の官吏(最高裁判事、検事総長等)の任命は、国会の指名、内閣の助言と承認により天皇が行なう。

しかし、天皇には、任命を拒否する権限はない。

天皇の国事行為の権限は、すべて形式的、儀礼的なものであり、自ら判断する権利を与えられてはいない。

そのことは、天皇の行為の根拠は、すべて国民の総意(意思)に基くものであるからである。

 (2) 一方、日本学術会議法第7条では、

  日本学術会議で選考した候補者を内閣総理大臣に推薦し、それに基いて内閣総理大臣が任命する

とされており、日本学術会議が選考、推薦した候補者を、自動的に内閣総理大臣が任命する仕組となっている。

日本学術会議法では、予め会議が会員として推薦すべき候補者の数を余分に推薦し、その中から定数分のみを総理大臣が任意に任命するという形式、定め方をとっていないのである。

つまり、内閣総理大臣は、日本学術会議から推薦された候補者を無条件で任命するという仕組となっているのである。

この点で、天皇が任命すべき内閣総理大臣、最高裁長官などの任命と全く同じ構造となっているのである。

その根拠は、日本学術会議法第3条にある

  「日本学術会議は独立して左の職務を行なう」

  という規定である。

   日本学術会議は、他のあらゆる権力(行政権を含む)から独立して、その職務を行なう、ということは、会の活動のみか、会の活動を支える会員の選任についても、他の権力からの独立を保障されているということである。

仮に、行政権において会員の実質的任命権を有することが許されれば、日本学術会議の独立性は有り得ないからである。

そして、日本学術会議の活動の独立の保障は、憲法第19条思想、良心の自由、第23条学問の自由の各保障を前提としているのである。

 (3) 仮に、日本学術会議の会員について内閣総理大臣が実質的任命権を有することを認めるのであれば、天皇が個人的に気に入らない安倍総理や菅総理を任命しないことも合法である、ということになる。

このことは、憲法上絶対に許されないことである。

 

2、このように日本学術会議の会員の選任については、形式上内閣総理大臣の任命行為が介在するものの、それは、天皇による各種行政官等の任命と同様、ごく形式的、儀礼的なものに過ぎず、いわば権威付けのための形式的手続であり、これを覆すような内閣総理大臣による解釈、介入の余地は全くないのである。

このことが現在の憲法の下で成立した日本学術会議法の正しい解釈であり、理念である。

これに対して、法文が内閣総理大臣の任命を明記していることを根拠に、いかにも内閣総理大臣が実質上も任命権を有していると解釈することは、天皇が自身の判断に従って、国会で指名された内閣総理大臣や内閣によって指名された最高裁長官を任命しないことも出来ると考えるのと一緒である。

日本学術会議の会員に対して内閣総理大臣が実質上の任命権を持つなどと考える者は、憲法と日本学術会議法を全く学んだことのない愚か者と言うほかない。

伊東 章

 

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